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サブリース、2つの判例(ビル経営管理士講座より)

サブリースに関する判例として二つ地裁の典型的なものを紹介します。 まず、サブリース契約に借地借家法32条の適用が認められた。つまり、減額請求権が通った例です。

これは平成10年2月の判決なのですが、S不動産はA社から平成3年、新宿の神楽坂所在の地上4階、地下1階の建物の地下1階ないし3階の一部、これを契約期間20年、転貸サブリースは自由に行える、マスターリースの賃料は3年ごとに10パーセント増額するという賃料自動改定特約付きで賃借しました。

 本件はいわゆる2番目の賃貸事業受託方式のサブリース契約。大手不動産会社のS不動産が賃貸人であるA社に対してテナント賃料を保証するという、趣旨でした。マスターリースの内容ですが、平成3年10月、有効面積を698.16坪、月坪単価3万4,500円。賃料月額2,408万円、敷金が6億3,880万円で契約しました。ところがバブル崩壊の影響で、平成4年半ばから賃貸ビル事業が不振となった。

そこで、S不動産は平成4年秋ごろからA社に対して賃料の減額を再三申し入れるようになりました。しかし、オーナーは「冗談ではない。お宅は賃料はこれだけは最低保証すると言ったではないか」ということで問題になったわけです。

S不動産は平成5年2月、月額賃料を一方的に減額して年額1億6,069万円しか払わなくなったわけであります。そこで、S不動産とオーナーとは平成5年6月に覚書を交わしまして、有効面積697坪、賃料は平成4年12月までは月額1,339万、5年の1月1日から平成8年3月までは1,360万というふうにしまして、S不動産はこの合意による賃料額が当初賃料月額2,408万を上回るように転貸条件の向上に努力しましょうということが合意されたわけであります。

 つまり、月額2,408万のものが1,300万になったわけですから、オーナーは資金計画が完全に狂います。これを借入金で調達していたら返済がとんでもないことになるかたちであります。

 4番目ですが、S不動産は平成8年、再び賃料減額を要求して交渉したのですが成立しない。平成8年9月、A社に対して内容証明郵便で「平成8年9月から月額773万、年額で9,287万に減額せよ」。もともと、「月2,408万の賃料が入ります」ということで事業計画を立てたものが773万になるのですから、これは訴訟するしかなかっただろうと思いますが、こういうかたちで減額請求が来たというものでございます。

 S不動産は当初2,408万円の賃料を約束した。これがある時から1,300万円台になる。ある時から700万円台になる。こういうかたちで下げるわけですが、減額の請求はしたものの調停も何もやっておりませんが、一方的に減額した額しか振り込まなくなってきております。これは理論的には正しいのかというと、正しくありません。
 賃料増減額請求権というのは、減額請求のときに減額の効果が発生致します。ですから、減額請求をすれば直ちに減額になっているのですが、では、テナントの言い分通り1,300万なら1,300万に減額されているかというとそれは分かりません。

 例えば減額請求をします。減額の調停を起します。調停が確定して初めて減額の額が分かります。そうすると、減額請求の時にさかのぼってこの賃料であったということが決まるわけであります。この差額はというと、あとで清算することになっております。これは最高裁の判例で確定しておりますが、減額請求をした場合もテナントは従前賃料を払わなければいけないことになっております。

一方的に自分が言った減額額しか振り込まなくなってくると、賃料の一部不履行ということになります。 ただ、このケースはサブリースですから、一部不払いだからといって契約を解除したら多分S不動産は万歳で大喜びであります。要するに、こんな何千万の賃料を払ってくれる客を逃してしまったら、あとでテナントを埋めるのが大変なことになりますから、理屈の上では契約の一部不履行で解除はできるのですが、オーナー側はそういう対処ができませんから、賃料がいくらかどうかを争うしかなかったというわけです。

 そのときに問題は、契約では2,408万円で契約をしているわけです。契約は守らなくてはいけません。2,408万払わなければいけません。何でこんなものが契約したにもかかわらず一方的に下がるかというと、借地借家法32条の減額請求権、強行法規を行使したときしかあり得ないことになります。そこで、ではサブリースの場合に賃料の減額請求権というのが果たして働くのか、そもそもサブリースというのは借地借家法の適用になる賃貸借なのかということが、ここで正面から争われることになったわけです。

 裁判所は、「本件はサブリースの中でいうと賃貸事業受託方式のサブリースで減額請求権の適用はできる」と言ったわけです

禁反言の原則というのは、「これは最低賃料です。うちは下げることをしません。下げません」という約束があったということを言うわけですが、それに反するのではないか。前に言ったことと反することを言っているのではないか、あるいはこういうのは信義則から見て許されないのではないかということについては、「原告は不動産業を営む会社であって、被告は、オーナーは建物の管理を主たる目的として設立された会社であること、本件契約では賃料保証と増額特約が合意されたなどの事実は存するが」、ということは、「賃料を保証します」ということを裁判所は認めたわけです。ですが、「賃料保証及び増額保証の合意は本件減額合意」、というのは、途中で減額合意をしておりますから、こういう減額の合意をいったんしたということは、最低保証などはなくなってしまったのだと言わざるを得ない。
 「かつ、借地借家法32条の片面的強行法規制にかんがみれば、本件においては減額請求は禁反言とか信義則によっても否定されない」。つまり、一度は下げることに合意したではないか、ということは、「増額していきます」とか「これが最低です」というのは減額の合意をしたことによって撤回されたのだというふうに裁判所は言ったわけです。


 減額を制限する方向に作用する事情と、減額を肯定する方向に作用する事情を述べています。
 まず、サブリースで減額を認めてはいけないのではないかという事情としては、「経済情勢の激変が生じても賃料の値上げを保証しますという約束がされているということは、本来減額は認めてはいけない方向が働く。それにもかかわらず、実際には当初からそれよりも大幅に低い賃料しか支払われていなかった。それから、ディベロッパーが当初約束した賃料は相場よりも高い賃料であった」。これは実はM不動産との競合があったので相場より高めに設定したのです。


 「相場よりも高い賃料であったが、当事者間の関係を考えると契約自由の原則は尊重されるべきであるから、本来、その差は減額請求によっても是正される必要がないこと」。だから、この判決では減額請求は認めましたけれども、もともと高めに設定されている部分を考慮して、その部分は減額を認めませんでした。「当初の賃料はその後の減額の合意があっても目標数値的な意味は残っている」。


 一方、減額を肯定する方向は、「ディベロッパーは建物の建築には関与していない」。つまり、総合事業受託方式ではないといっているのです。当事者間で調整すべき損益は要するに賃貸借に関するものに限られている。「オーナーは本件サブリースがなくて、建物の賃貸においてはバブルが崩壊した以上は、どうせ何らかの不利益はこうむっていたはずなのだ」。
 それから、「ディベロッパーは本件サブリースで現に赤字であるうえ、減額訴訟の中で不動産鑑定士が鑑定した賃料であってもなお赤字になってしまう」ということを勘案します。「これらを総合すれば、現行賃料と不動産鑑定士の鑑定賃料の差額をやる」。ということは、現在の賃料と不動産鑑定士がこの辺が適正賃料であると出したわけです。現行賃料からの関係でいくと、これの中間というかたちを採っているというわけです。


 いずれにしましても、これは総合受託方式ではないということでやったのですが、サブリース契約で借地借家法32条の適用が排除されたケースを見てください。
 S不動産はC社から平成3年文京区本郷所在の21階建ての建物の3階ないし18階を、期間15年、賃料は3年ごとに10パーセント増額をするという賃料自動改定特約を付けて賃借しました。本件はいわゆるサブリース方式なのですが、C社が、オーナーがS不動産に対して賃料自動改定特約に基づいて増額後の賃料の支払いを求める。
 増額後の賃料の支払いと、実際にS不動産が支払った賃料のとの差額を敷金から充当して、敷金の不足分を請求したのに対して、S不動産のほうから逆にC社に対して、賃料減額請求を根拠に減額された相当賃料の確認を反訴として起したというものです。
 当初の契約の内容は一括借り上げ、転貸はS不動産の責任と負担で行う。賃料は年額197,740万円、共益費が3億1,640万円、賃料は3年ごとに直前賃料の10パーセントを増額する。S不動産の転貸条件が増減しても、S不動産とC社はこれを理由に家賃の変更を申し出ることはしない。


 急激なインフレ、その他経済情勢に著しい変動があった結果、値上げ率および敷金額が不相当となったときは、「賃料の値上げ率を当事者間で協議することができる」ということで、あくまで値上げをどうするかということであって、値下げということは全く当事者間の契約の中に出てきていません。ですから、これが3年ごとに10パーセントずつ上がるという契約になっているわけです。10パーセントずつ上がる値上げ率については考慮しましょうというかたちになっています。
 「S不動産は平成6年4月分の賃料として、消費税込みで1億4,577万円を支払ったにとどまる」。約定賃料より約5,959万円不足致しました。C社は不足分は敷金に充当して、「敷金の不足分を直ちに補填せよ」という請求をしました。
 ところが、その後もS不動産は一部不足金しか支払わなかったのですが、平成6年2月9日付で、平成6年4月1日以降の賃料を年額13億円に減額してくれと、もともと19億円だったものを13億円にしてくれと、更にS不動産は平成6年10月にはこの賃料を8億円にしてくれと、更に平成9年2月にはこれを7億円にしてくれと。要するに19億円の賃料を最終的には7億円と減額請求が来たわけです。


 したがってオーナーは、「これが約定賃料であるから差額を敷金から補填してこれをちゃんと払え」というふうに請求したのです。これに対してS不動産は19億円を最終的には7億円に減額していますから、「この減額請求の額が正しい賃料だ。これを認定してくれ」ということでお互いに訴えを起し合って争ったというケースです。
 これについて結論は正反対になりました。いろいろな事情を縷縷(るる)認定しまして、「以上を考察したところによれば、サブリース契約が将来二度と利用されるべきでない不当な契約類型であるというのならともかく……」、すごい言い方ですが、「それが賃借人、大手不動産会社にとっては土地に自ら資本投下することなく賃貸ビルを供給できるというメリットがあって、賃貸人、地権者にとっても、大手不動産会社等にビルを賃貸して賃料保証による長期安定収入が得られるというメリットを有し、そうであるからこそ被告をはじめとする大手不動産会社によって大規模に採用されて社会的に公認されていたことをも考慮すれば、事後的な司法審査の場で安易に私的自治……」、当事者間の契約にという意味です。「当事者間の契約に安易に介入して、当事者が当初から予想していた効力を否定することは妥当ではない。その他今までに認定した本件契約の趣旨・目的、サブリースの趣旨と目的に照らせば、借地借家法32条は本件契約には適用されないと解すべきである。そしてその結果、たとえ本件契約後の賃料相場の変動が予想に反したことによって被告のS不動産が被害を被ったとしても、その予想を誤ったことによる不利益は賃料保証と全リスクの負担を標榜した被告のS不動産において甘受すべき筋合いとされてもやむを得ないというべきである」。 もっとも、この点についてS不動産は、「建物の使用収益とそれに対する対価の支払いという賃貸借契約の要素がある以上、本件契約では当然に借地借家法が適用されるべきである」と主張する。もう一つ前の勝ったほうの判例と同じ言い方をしたわけです。 これに対しては、「しかしながら、本件契約が借地借家法が典型的に予定する借家契約とは異なる面があることは否定のしようがない。本件契約の借地借家法の規定が適用されるかどうかは、契約締結の経緯、契約条項の実質的な意義内容等を検討して当事者の意思に照らして、本件契約が借地借家法の予定する建物賃貸借としての実体を備えているかどうかという観点から実質的に決めるべきである。 この契約はまず一つ、当事者間であらかじめ賃料を保証している。これを前提とした利益調整を行っており、「これには一定の合理性がある」。それから「当事者間で当事者間で借地借家法32条の適用を排除する合意を明確にしている」。もう一つ「本件では借地借家法32条の背後にある社会的弱者としての賃借人保護という要請が働かない」。 これは、賃貸人よりも賃借人のほうがはるかに大きい企業ですから働かない。「という事情を考慮すれば、少なくとも同条が適用を予定する建物賃貸借としての実体を備えていないというべきである」ということで、こちらは減額請求が否定されたかたちになっています。 これから見るとほぼ同じ時期に出た判決であって、同じ原告であって、片方は適用するといい、片方は適用されないといったものだから話題になったわけです。かたちの上では、適用されたほうは賃貸事業受託方式であった。借地借家法を否定されたのがどちらかというと総合事業受託方式であったということは、あえて言えば言えないわけではありませんが、総合事業受託方式だったら借地借家法の適用がなくて、賃貸事業受託方式だったら借地借家法の適用があるというふうに判断するのは危険だろうと思っています。 ただ、2番目のサブリースの適用が排除されたほうのケースなのですが、これは実はオーナー側の代理人の弁護士が総合事業受託方式には借地借家法の適用がないという自分の著書などを証拠に出されたほかに、S不動産の代表取締役が実は業界紙なんかで発言しているサブリースの発言を全部証拠に出したのです。 これは何をやっているかというと、S不動産の代表取締役が、「当社のサブリース方式というのは賃料最低額、これは必ずオーナーに差し上げてオーナーに必ずもうけていただいて喜んでいただくという、当社の誇るべきシステムである」というふうに業界紙で語っているものを全部証拠に出しました。 裁判所が、「前記認定の契約の趣旨・目的に照らすならば」というのは、「サブリースというのは賃料を絶対に下げないということで、もともと運営しているものなのだ」というふうな証拠を全部出しているというところがありますから、単純に総合事業受託方式だからとか、賃貸事業受託方式だから勝ち・負けという区分けはしないほうがいいと思います。 要するに、このサブリース契約がどういう趣旨で行われたかによって単なる借地借家法とは別の、いわゆる利益を確定させる一種の不動産の運用契約なのだと考えるか、借地借家契約なのだと考えるかという問題ですから、むしろ、契約が締結された経緯がいかなるものかということで判断すべきものだと理解されたほうが、私は正しいのではないかという気がします。 ただ、いずれにしてもサブリースをやることは別として、一般論として、とにかく賃料相場と掛け離れているから、高い、安い、減額請求が通る、通らないはあり得ない。これを念頭においておくべきです。

 

(ビル経営管理士講座より)




 
 
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