コラム・論文

建物検査研究会
一級建築士を中心とした、建築系専門資格者によって構成される研究会です。営利企業とは異なるNPOとしての客観的・公正な支点から、適切な建物検査のあり方を研究しています。第三者として厳しい判断やアドバイスを行い、消費者が安心して住宅を購入できる環境作りを目指します。
第2回 瑕疵担保責任の期間制限の起算点は?
第1回 欠陥住宅 損害賠償額はいくら?

瑕疵担保責任の期間制限の起算点は?

瑕疵(かし)担保責任の期間制限に起算点は、単にクラックを発見した時ではなく、弁護士の助言に基づいて専門業者に相談し、見積書の交付を受けた時とした。 ________________________________________________________________________________ Q
『付帯設備及び状態確認書』も記載された内容と異なる瑕疵があった場合は、売主は買主に対して、その修復の義務を負うものとする。但しその期日については本物件の引渡し後、2カ月とする」旨の特約は有効性なのでしょうか

引き渡し後2カ月に制限される瑕疵は、「雨漏り、給排水管の故障等、一般人が建物に居住する際に、通常の注意義務をもってすれば一見してこれを発見することが容易に可能な瑕疵を指すものと解するのが相当」として、限定的に解釈すべきです。
本件土地の造成時の地盤改良工事の際の転圧不足による地盤沈下および施工上の不備による、土間コンクリートのひび割れ、壁面・基礎部のクラック、外壁盛り土の沈下、床タイルの割れは、民法570条・566条3項に定める1年の期間制限を除斥期間(じょせききかん)と解すべきです。(大阪地裁平成11年2月6日判決)
判決内容
________________________________________________________________________________

【建物プロフィール】

木・鉄筋コンクリート造瓦葺地下1階付き2階建て

【入手経路】

土地付中古住宅の売買契約
平成6年1月17日 売買契約
平成6年3月28日 引渡し

【相手方】

売主(事業者ではなく、個人として本件建物を購入し居住していた者)

【法律構成】

債務不履行責任と瑕疵担保責任【民法570条】を選択的に主張
* 各共有持分の割合に応じた修補費用相当額の損害賠償を求めた。

【期間制限】

「本件建物について別添『付帯設備及び状態確認書』も記載された内容と異なる瑕疵があった場合は、売主は買主に対して、その修復の義務を負うものとする。但しその期日については本物件の引渡し後、2カ月とする」旨の特約の有効性と解釈が争点の1つとなった。

【判決の結論】

1 判決の法律構成
原告の主張する瑕疵を認め、本件特約の限定的に解釈したうえで、本件瑕疵はこの特約により行使期間を制限される瑕疵に当たらないとして本件特約の適用を排除し、瑕疵担保責任による補修費などの損害賠償請求を認容。
2 請求額と認容額
請求額⇒635万円
認容額⇒287万円【慰謝料、弁護士費用は否定】
【認定された欠陥】
本件土地の造成時の地盤改良工事の際の転圧不足による地盤沈下および施工上の不備による、土間コンクリートのひび割れ、壁面・基礎部のクラック、外壁盛り土の沈下、床タイルの割れ。

【コメント】

(1) 本件特約によって瑕疵担保責任による請求権行使期間が引き渡し後2カ月に制限される瑕疵は、「雨漏り、給排水管の故障等、一般人が建物に居住する際に、通常の注意義務をもってすれば一見してこれを発見することが容易に可能な瑕疵を指すものと解するのが相当」として、限定的に解釈し、本件瑕疵への適用を否定されました。そして、本件瑕疵に適用される民法570条・566条3項に定める1年の期間制限を除斥期間と解し、この期間内に売主に担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることで足り、裁判上の権利行使までは要しないとしました。
(2) 瑕疵担保責任の期間制限に起算点についても、単にクラックを発見した時ではなく、弁護士の助言に基づいて専門業者に相談し、見積書の交付を受けた時としました。
(3) 瑕疵担保責任による損害賠償請求は信頼利益に限られるとしても、それは瑕疵がないものと信じたことにより被った損害であり、補修費用相当額はこれに含まれるとしましました。
(4) 慰謝料については「特段の精神的苦痛」を要求し、弁護士費用については「売主の行為に強度の違法性」を要求し、いずれも本件では認められないとして否定しました。

用語解説

除斥期間(じょせききかん)
法律関係を速やかに確定させるため、一定期間の経過によって権利を消滅させる制度。
<参考文献>
判例タイムズ社
民事法研究会

第1回 欠陥住宅 損害賠償額はいくら?

中古住宅の売買で重大な欠陥が見つかり、その損害賠償額は建物代金相当額のみとした判決
Q.瑕疵〔カシ〕がある建物で売買契約を結んでしまいました。いくらの損害賠償金額が可能でしょうか?
A.建物の売買で、買主が建物の瑕疵を理由として損害賠償額として認められたのは瑕疵担保責任に基づき建物代金相当額についてのみ認容されました。転居費用、仮住費用、調査費用は否定されました。(東京地裁平成 14年1月10日判決)

【判決内容】

「建物プロフィール」
 木・鉄筋コンクリート造スレート葺3階建て住宅
「入手経路」
 中古住宅売買契約【代金は土地・建物を合わせて3200万円】
「相手方」
 売主 「法律構成」(かしたんぽ)瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求
「判決の結論」
 瑕疵担保責任に基づき建物代金相当額について損害賠償請求を認容。転居費用、仮住費用、調査費用は否定。  
  請求額⇒1512万円 
  認容額⇒1282万円
「認定された欠陥」
 原告主張の欠陥をすべて認定
   ①地盤の不動沈下・基礎構造の欠陥
   ②壁量不足
   ③火打ち材の欠落
   ④アンカーボルトの欠落
   ⑤雨漏り・白蟻被害による部材の腐蝕

「コメント」

1.中古住宅の売買契約の事案(代金は土地・建物を合わせて3200万円)で、解体・再築以外に補修することが困難な欠陥の存在を認めつつも、建物代金額(1282万円)を損害賠償額の上限とした判決です
 ①民法570条の損害賠償の範囲は 信頼利益に限定されますが、「売買代金と売買時に客観的取引価格との差額は 信頼利益に属する」としたうえで、
 ②本件建物の売買価格は代金額から土地代金分(近隣実勢価格から算出)を控除した1282万円であり、この売買価格の損害賠償を認めました。
2.原告は、主体的請求において、①取り壊し立替費用相当損害金に付き上記1282万円を上限として建物瑕疵の損害を計上したほか(新築建物取得を回避)、②調査鑑定費用、③仮住まい費用,④引越費用をも請求しましたが、判決では「瑕疵ある目的物の価格が責任の上限となる」として②~④は否定されています。
3.担保責任における損害賠償を「信頼利益」ととらえ、目的物自体に関する損害賠償を対価の限度に制限する考え方です。
4.なお、本件においては、地盤(擁壁)自体に欠陥が存することから、土地代金に食い込んだ損害賠償請求、あるいは、契約解除も可能な事案であるようにも思われます。
裁判所 建物種類 欠陥内容 解体再築 転居費用 仮住費用 調査鑑定費用 合計/万円
判決日
東京地裁
判決
H.14.1.10
木・RC造
3階建て
中古売買

3200万円
地盤の不同沈下及び
基礎構造の欠陥
・壁量不足(筋違い欠落)
・火打ち材の欠落
・アンカーボルトの欠落
・雨漏り
・白蟻による部材の腐蝕
1282 0 0 0 1282
1282 60 135 35 1512

【用語解説】

■売主の瑕疵担保責任
 民法570条売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
解説
 民法第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
意義
 売買契約の売主には瑕疵のない目的物を引き渡す義務があるから、瑕疵のある物の引渡しは債務不履行であり、したがって 570条は債務不履行責任についての特則であると考える。
隠れた瑕疵
 「隠れた」とは、買主が瑕疵の存在について善意・無過失であることを意味すると解されている。また、何をもって「瑕疵」とするかは、契約の目的によって異なる。
行使期間
 本条が準用する566条 項によって、瑕疵担保責任が追及できる期間は、買主が瑕疵を知ったときから年間に制限されている。
効果
 瑕疵担保責任を追及する場合、買主は損害賠償請求ができる。また、瑕疵のために目的を達することができないときは、契約の解除をすることができる(566条1項の準用)。 契約責任説によれば、瑕疵担保責任は債務不履行責任の特則であると考えられるから、買主は損害賠償請求権・解除権のみならず、契約の効果としての完全な履行を請求する権利があるとされる。すなわち、瑕疵の修補を請求し、あるいは代物を請求する権利もあるとされる。

■履行利益・信頼利益(りこうりえき・しんらいりえき)
 債務者が契約に関して損害賠償請求をするにつき、どんな利益が害されたかを問題とする場合の区別。契約が約定どおり履行されれば債権者が得たであろう利益、例えば利用とか転売による利益等を履行利益といい、無効の契約を有効と信頼したために失った利益、例えば有効な土地の売買契約と信頼して土地を見に行った費用とか、ここに建築するため用意した資材等を信頼利益という。この区分はドイツ民法にならうものであり、わが民法にはこのような区分はないが、一般的には債務不履行による損害賠償は履行利益のみが対象となり、信頼利益は、いわゆる契約締結上の過失のような場合に限られると解されている

<参考文献>
判例タイムズ社 
民事法研究会

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